大事に育ててきたパン種。
引っ越しや長期旅行をしなければならないとなった時に、このパン種も一緒に連れていけないかな?と思ったことはありませんか?
答えは、可能です!
この10年の間、私自身数年毎にロンドンと東京に拠点を移したこともあり、大事に育ててきたルヴァン種のこっちゃんとは何度も飛行機での長距離旅行を経験してきました。
東京ロンドン間のフライトは、ルートにもよりますが直行便だと約12~15時間で、自宅から滞在先への移動時間等を含めると約20時間以上スーツケースに入れて持ち歩くことに。
その際、種は①乾燥種、②生地種、⓷硬めの液種、のいずれかの方法(または組み合わせて)でパッキングして持ち運んでいます。
今回は、その作り方やそれぞれのメリットデメリットをご紹介します。
まずは、簡単にそれぞれの特徴を表にしてみました↓
乾燥種 | 生地種 | 液種 | |
---|---|---|---|
発酵のスピード | かなり遅い | 遅め | 早い |
生地状態のわかりやすさ | × | △ | 〇 |
復活のしやすさ | △ | 〇 | 〇 |
持ち運びのしやすさ | ◎ | 〇 | △ |
機内持ち込み | 〇 | △ | △ |
おすすめの時期 | 夏 | オールシーズン | 冬 |
移動の長さ | 長 | 中 | 短 |
1.乾燥種
ルヴァンの液種を乾燥させて、フレーク状にしたもの。
一番持ち運びしやすく、液体物にも該当しないため、飛行機搭乗時は手荷物でも預け入れ荷物でもOK。
しかし、種の状態がわかりにくくダメになってしまっても気づきにくい点や、復活させるのに少し時間がかかるというデメリットも。
◆乾燥種の作り方
①種をリフレッシュする(粉と水を混ぜてフィーディング)
②リフレッシュした種がピークに達したら、種をオーブンシートに薄く広げて伸ばす
③薄く伸ばした種に別のオーブンシートを重ねて、上から押すようにしてさらに伸ばし、オーブンシート同士を密着させる
④そのまま1~3日(できれば涼しい湿度の低い場所で)、種が乾燥してパリパリになるまで放置する
⑤種の水分が抜けてパリパリになったら、ジップロック等にいれる
⑥⑤のジップロックの上から手や麺棒を使って種をなるべく細かく粉砕する
◆乾燥種の復活のさせ方
①瓶に乾燥種20gとぬるま湯40gを混ぜて、乾燥種が少しふやけるまで混ぜる
②①に粉40gを足して、よく混ぜる
③22~26℃程度の温かい場所に置く
④表面全体に気泡がでてきたら、一旦冷蔵庫にいれるか、さらに続けてリフレッシュする
2~4回あまり間を置かずにリフレッシュすれば、ほぼ元のように元気になると思います。
それでもあまり種の元気がない場合は、リフレッシュの際に砂糖や小麦粉の一部を全粒粉やライ麦に置き換えてみて下さい。
2.生地種
ルヴァン種の水分量を40~50%程度に減らして硬い生地にしたもの。
水分量を減らすことで発酵スピードを緩やかにすることができます。
液種よりも持ち運びがしやすいものの、手荷物として飛行機に持ち込めるかは微妙なところなので、私はいつも預け入れ荷物にいれています。
リフレッシュ後、比較的復活させやすい点は◎。
◆生地種の作り方
※生地が硬いため、手ごねで腱鞘炎になってしまう例をよく聞きますので、ミキサーを使うのがおすすめです。
①種:粉:水=0.5:1:0.4または0.5の割合で混ぜる。(例:種25g、粉50g、水20~25g)
②①の生地の粉っぽさがなくなったら、捏ねてひとまとめにする
③ジップロックにいれて密封し、さらにジップロックを布巾等でくるんで輪ゴムや紐でくくる
※元種の割合を増やすとピークに達する速度が速くなり、減らすとピークに達する速度が緩やかになるので、持ち運ぶ時間の長さ等により量は調整して下さい。
3.硬めの液種
粉の割合を少し多くして硬めにした液種をそのままジップロック等にいれて持ち運ぶ方法。
匂いや気泡によって種の状態も確認しやすく、リフレッシュ後は通常の状態に戻りやすいものの、長距離で特に夏場の熱い時期は発酵が進みやすいので、比較的短時間で気温がそこまで高くない時におすすめの方法。
飛行機での移動の場合、100ml以下の容器でなら機内持ち込み可能ですが、念のため預け入れ荷物に入れた方が安心かもしれません。
◆硬めの液種の準備の仕方
①種:粉:水=1:5:3~4の割合で混ぜる。(例:元種10g、粉50g、水30~40g)
②持ち運び用の瓶またはジップロックに種をいれる。
※こちらも生地種と同様、元種の割合を増やすとピークに達する速度が速くなり、減らすとピークに達する速度が緩やかになるので、持ち運ぶ時間の長さ等により量は調整して下さい。
※漏れを防ぐために二重にしておくとより安心です。
◆移動時期や時間に応じた種の選択の仕方(例)
上記のそれぞれの種の特性を踏まえ、移動時期や距離、かかる時間などに応じてどの手段をとるか考えます。
また、元種の状態によっても発酵のスピードや強さには幅があるので、あらかじめお手元の元種の状態(どのくらいの気温や時間でピークに達するか等)を把握しておくのは大事なのではないかと思います。
以下、状況別の私の選択の仕方を紹介します。
ここでの種は、気温22℃の場合に硬い液種は5時間、生地種は12時間でピークに達すると仮定します。
※気温や時間はあくまでも目安です。
①気温15度未満の時期
10時間以内の移動 → 液種
約10~24時間の移動 → 生地種
24時間以上の移動 → 生地種 と 乾燥種
②気温15~26℃の時期
5時間以下の移動 → 液種
約5時間~15時間の移動 → 生地種
15時間以上の移動 → 生地種 と 乾燥種
③気温27度以上の時期
4時間以下の移動 → 液種
約4時間~10時間の移動 → 生地種
11時間以上の移動 → 生地種(+保冷剤)と 乾燥種
◆その他、持ち運びの工夫
寒い冬場は、発酵がゆっくり進むだけなので特に問題ないですが、夏場で特に30℃を超えてくると発酵が早くなり酸味も強くなりやすくなるので、保冷バックや保冷剤を使ってなるべく温度が上がらないように工夫をします。
また、乾燥種だけでは種の状態がわかりにくく、個人的に少し心もとないので、乾燥種に加えて生地種または液種のいずれかを準備し、さらに、飛行機に持ち込むスーツケースが2個以上になる場合は、ロストバゲッジ等のリスクに備えるため、別々のスーツケースにいれるようにしています。(実際に海外の空港で、1つの預け荷物が出てこないというトラブルもありました・・・)
大切に育ててきた皆さまの種が引っ越し先や旅先など、新たな地でも一緒に暮らせますように。